2018年夏公開のアニメ映画の感想シリーズ第二弾、「未来のミライ」の記事です。
この映画、3回映画館で観たのですが、観れば観るほど眉間にしわが寄るような気がしましたね。
最初は、封切りの日に立川のシネマシティで観たのですが、上映終了後の「うーん」というような雰囲気を今でも思い出します。午前中に観ていたのが個人的に大変気に入っている洋画「雨に唄えば」だったので、2作品の間の差には考えさせられました。
もっとも、「雨に唄えば」はイケイケの時代に作られた「楽しさ中心の作品」てすから、「繋がる家族の歴史」というメッセージを持つ「未来のミライ」と比較するのは、あまり意味が無いとは思いますが。
前売り券を買ってしまっていたので、いつものシネコンに通ったのですが、「うーん」という感想は消えません。修行のような気分でした。「せっかく買っちゃった前売り券だし…」と。
ということで、ここまで読んでいただくと、以下あまり楽しい記事ではないことが想像できるかと思います。
この映画がお好きな方は、「けっ、下らないこと書いてやがる」と思いながらご覧いただくか、そっとページを閉じるのが良いと思います。
あと、今回は写真が2枚しかなく、文字ばかりです。ごめんなさい。
では、始まり始まり〜。
【大いなる誤解】
どうも「タイムスリップ」と「みらい」というキーワードに引っ張られてしまっていたようで(※)、若干見ていた画像等からも主役は「みらい」だと思っていたのだけれど、実は主役は「くんちゃん」とやら申す幼稚園児の男子だったらしい。
ええーっ、萌えは? 萌えじゃないの?(←ブヒィ思考)
※:そりゃ、ワシら世代なら「ママは小学4年生」でしょ。もっとも、その頃の私は大学生でしたが。「ミラクル☆ガールズ」とか、懐かしいですねえ。
【ある種の「四方四季の庭」を連想しました】
くんちゃん・未来ちゃんのお父さんはどうやら独立したての建築家らしいのだけれど、冒頭で住んでいたお家をぶち壊して、なぜ、わざわざ住みにくそうな家を建てたのかが理解し辛い。建て替え後のあの家じゃ、年取ってからは暮らせないのではないかしらん。
でも、建て替えないと周囲から隔絶された庭は出来ないから、「異世界と繋がる秘密のお庭」が創り出せないのだろうな。そうすると、建て替えは必要悪か。
あの庭は、時空間を超越する所なので、なんとなく「竜宮城の四方四季の庭」を連想しました。
最後、キャンプに行く前にゴネたくんちゃんが地獄に落ちかけた話からすると、ある意味「見るなの座敷」なのかも。ま、くんちゃんの方はハッピーエンド(?)でしたけどね。
不思議の庭が発動するのは、いつもくんちゃんがイライラしながら、中段の居間・キッチン・ダイニング空間から降りていく時。
あの間取りだと、下段が将来的には子供部屋になるのだろうから、今を過ごす空間であるリビングから、未来に生きる子供たちの空間である子供部屋へ降りていく時に発動するのかしらね。
ということは、あれは子供にしか起こらないマジカルってことでしょうね。未来のくんちゃんと未来ちゃんは、まだ大人に成り切っていないから、木を使うことが出来るのかな。未来ちゃん、しっかりしてて、凄く大人っぽいけど。
なお、家族の事象が記録されている以上、庭のあの木は曾祖父さんたちの頃から同じ場所に生えていた筈で、主人公達の家は代々あの辺にあった土地を相続したのだろう。
「曾祖父が曾祖母にプロポーズした時の『あの木の所まで競走』の木なのかも?」とも思うけど、そうなると土地の位置関係が支離滅裂になるので、それはあり得ないですよね。
【あれは「夢」、です。】
建築家の話でいくと、お父さん、MacBookProっぽいノートパソコンだけで仕事してるのですかね? CAD作業とか、あれでは苦しくないのかしら。私なら、大画面の外付けディスプレイが欲しいです。
自分がああいうスタイルで仕事をしていないので、理解できていないだけかもしれませんけど。
大多数の建築士は、泥臭く仕事してますけどねえ…。
そういえば、エンドロールを見ていたら「書影協力」というのが出て来て「なんのこっちゃ?」と思ったのですが、お父さんのお仕事用の本棚に並んでる業界の本の「姿(イメージ)=書影」ということね。建築業界(とはいっても、基本、デザイナー系だけど)の人が見れば「ふーん」と思えるように、本物の姿形・色を使ってる訳ね。細かいところから作っとくと、話に厚みが増しますからね。
でも、わざわざ書影協力までしてもらっている割に、実務書が少ないんですよ。ネットを見ればある程度補えたり、自分が専門でない部分は外注に出せるとはいえ、手元に置いておきたい本は結構あると思うんだけどなあ。
それとも、お父さん、実は超優秀なのかも。
おとうさん・おかあさんは、設定に比して金持ちすぎる気がしますね。
住みやすくはなさそうだけど凝った家を新築していたり、凝り過ぎな家財道具の揃い方だったり、服装だったり。
なんか、メディアに掲載されてる専門家の記事なんかを詠むと「ああいうある種のスノッブさが、現実の子育て世代等の実感と乖離して反感を招くのだ」とかなんとか言ってたりしますが、そんな難しいものじゃなく、あれは、単に「世間の『建築家』という存在への、誤ったステレオタイプの集大成」のような気がします。
独立したばかりの若手フリー建築家なんて、あんなにリッチな生活を、あの地では営めないのではないかな?
あの家だって、凄くお高い建築物ですよ? こちらもプロなので、見れば分かりますよ。
あ、でも、あの家、一応は本職の建築家さんが監修・設計してるそうですね。
うーん。現実のお仕事では実現出来なさそうなのを、やっちゃった感じ?
私なども、たまには脳内で妄想建物をいじくる時もありますが…。もっとちっちゃくて現実的な、格安なのを妄想してます。
【声のお仕事】
くんちゃんのとても幼稚園児には思えない喋り方は、一体誰なのだろうと思っていたのだけれど、エンディングロールを見て上白石萌歌だと判明。先年「君の名は。」でぶちかました上白石萌音の妹でしたか。
姉はなかなかの演技であったと思いますし、役と実年齢も近いので違和感が無かったが、妹の方は慣れるまでは微妙に思えなくもなかったですね。
ただ、途中から思ったのですが、「ガチな声優さんが、本当に幼稚園児を再現してしまったら、キツくなりすぎてしまい、精神的に最後まで耐えられないのではないかな」と。
なので、結果としては、この配役で良かったのだろうと考え直しました。
自分が子供の頃のサイレントスピーチも、あんなもんだったのかもしれませんしね。
曾祖父役は、福山雅治なんですね。
こちらは、声がクドすぎる気がしました。強いというのかな。ていうか、率直に言って大河ドラマの「龍馬伝」思い出しました。
宮崎美子演じるばあばは、違和感ありませんでしたねえ。
役所広司のじいじは、埋没してる感じがして、ちょっと勿体ないかな。
【おかあさんの実家はどこ?】
お母さんの実家は、長野県方面なのではないだろうか?
山の様子、ちょっと田舎っぽい町の様子と。それに、テーブルの上に置いてあった新聞が、なんだか信濃毎日新聞っぽい気がした。
ひな祭りの際のじいじの「横浜は暖かいね」は、住んでいる所が横浜よりは寒いことを表しているし、ばあばの「新幹線で来るね」も、最初は東海道新幹線かと思ったけど、東海道新幹線で山っぽい所ってあえて言うなら熱海から静岡辺りに岐阜から滋賀くらい。その他の風景や小物、通ってくる時間やコストと合わせて考えれば、長野新幹線が一番違和感がないかな。
ただ、ひいじいじがひいばあばと結婚を決めた時のエピソードの際に、どうやらお母さんの実家の辺り(池田医院らしき門構えの建物が出てくる)に、ごく軽装で行っている点からすると、そんなに遠距離ではないような気もするし、謎は尽きない。
エンドロールに「信州上田フィルムコミッション」が出てくるので、イメージ的には「長野のどこか」というのは正解でした。
【謎解きはいつか、未来に】
「アガスティアの葉」のような「家族の出来事データベース」が出てきます。
未来の未来ちゃんは(←ややこしい)、その「システム」を理解し、使いこなしている訳ですが、「何故使いこなせるのか」「どうやって使いこなしているのか」などが示されないので、飛躍というか、唐突感が否めません。
あやふやだけど絶大な威力を持つ「システム」によって、なんとなく話は進展し一応の締めを得ます。
ここでも「何故」が解決されていないので、どうにも話が腑に落ちません。とても消化不良な気分ですね。
「全部、夢でっせ」とかだったら、どうしようかな。
謎解きと言えば、上の方で「庭の木」の話題に触れた際に「土地の位置関係が支離滅裂」と書いてますが、見れば見るほど、読み解き厨の当方の頭の中は「?」で一杯になります。
ひいじいじとひいばあばとのシーン、割合と大きな駅の近くなんだけと、あれは長野県なんですかねえ? まさか、横浜? 池田医院は、ひな祭りの時の会話でも出てくるので間違いはないし。おかあさんの実家の位置問題(?)と絡み合って、ますます、土地関係がちんぷんかんぷんになります。
曾祖父がやられているシーン、どう見ても戦艦が空襲を受けているので、一瞬「呉? ならば、榛名か」と思うのですけれど、エンドロールで出てくるのは横須賀・横浜の団体っぽい。となると、「長門」ってことなのかな。
横須賀の団体が協力で出てくるので、横須賀空襲は間違いない。ひいじいじは「体当たりする船」と言ってて、それはきっと海上特攻兵器の「震洋」だろうけれど、それ、横須賀にあったんすかね?
油壺とか、小網代の辺りがぎりぎり神奈川県だけど、長門がやられているシーンの横須賀空襲には合わないような…。
あと、飛行機のエンジン作ってる人が、学徒・予科練中心の震洋隊に入るもんなんでしょうか? ちと、詰めが甘いような。
曾祖父は、どう見ても横浜の近くで暮らしているとしか思えないんです。そうすると、横浜との地縁は繋がるんだけど、いろんなところの辻褄がねえ…。
【くそー。年齢を感じる】
お母さんの子供の頃のエピソードのところで衝撃を受けるのは、「見ている自分自身にとっては当たり前のシーンが、既に昔話に属している現実」を突きつけられること。
町並みからお母さんの実家までの流れの中で出てくる自動車達を見ていると、分かっちゃうのが、現在進行系の中年の悲しさ。
商店街に停まっているのは「アトレーワゴン」。
駐車場のは、左側が青い「マーチ」で、右側は赤い「ジェミニ」。
どこか農家か町工場の駐車場のところで出てくるのは、「エブリイ」と「アルト」なのね。あと、小屋の中は「サンバー」でしょ。「サンバー」の向こうのは、なんとなく、イギリスのMGかなんかっぽいオープンカーなのね。
いずれにせよ、当方が若い頃の車(MGを除く)ばかりで、精神的に堪えますわ。どれも80〜90年台中頃までのクルマ達なんだよですよね。
【大人の事情?】
この映画を取り巻くものを眺めていると、「新しい『ジブリ』が欲しい」と言うのが露わ過ぎて、何とも言えません。
主要な役は、俳優さんやらが声を当てるとこなんかもそうだし、全力を挙げて日本テレビ放送網がサポートする辺りも、いつか見たジブリ作品と同じようなものです。映画の封切りに合わせて過去作が「金曜ロードSHOW!」で放送されたりとかもね。
達郎も商売なので、頼まれればテーマソングだって「サマーウォーズ」と同様に提供しますよね。
「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」辺りまではちゃんと刻んで実績を上げて、目論見大成功ってところだが、今回の「未来のミライ」はというと、はてどうだろう。ちょっと苦しいんじゃないかなと思わざるを得ない。
もっとも、私は世間が騒ぐモノには逆に興味を失うへそ曲がりなので、「未来のミライ」以外の作品は見てませんが。(´▽`)
あー、でも、ダメだダメだ言ってるけれど、当方3回観てるんですわ。観客数の点では貢献してまっせ~。
見慣れてくると、不思議なもので、「まあ、こんなもんでしょ」とか「まあまあかな」とか思えてくる。
今は買う気にはならないけれど、その内サントラは買うかもしれないくらい、音楽の出来は良いですね。最後の「家族の樹」のところの音楽は、幻想的な画面の流れと相俟って特に気に入りました。
そういえば、Blu-rayとかが2019年1月に発売になるんですね。
「リズと青い鳥」は、血迷って4本も押さえてしまいましたが、うーん、「未来のミライ」は1本でいいや。一応、資料としての特典映像とかに期待して、Amazonの「スペシャル・エディション」にするつもりですが…。
「若おかみは小学生!」は、読み解きたくってノベライズも買いましたが、この「未来のミライ」は、Blu-ray買った後で買うかもしれませんが、とりあえず今は買う気になりませんね。改めて、覚めた目で観たら、実は凄い作品で、ノベライズ読みたくなるかもしれませんけど。
次回は、夏の映画シリーズ最終話「ペンギン・ハイウェイ」の感想記事です。