久しぶりに遅い終了時刻の上映を見てきました。
この時間に終わると、帰宅して眠るのは早くても午前0時半です…
本当はもっと前に見ておきたかったのですが、諸事情あって上映終了の前日にしか見に来られなかった「一秒先の彼女」。台湾の映画です。
邦題のセンス、良いですねえ。原題よりも良いと思います。
「君と○○の××」というのは、定番中の定番の一文ですね。今回のタイトルに使った「君と永遠の……」なんてのも、もう、とても陳腐な表現です。 でも、今回の映画には「永遠の1日」という一言を使わざるを得ないと思うのです。
時の流れの不思議さに絡められた、タイムストップ系のSFロマン -いや、ラブロマンスかも- ですね。ガチンコなSFではなく、「少し不思議」系に属するSF作品になるかなと思うのですが。うん?「少しファンタジー」のSFかな。
ヒロインの冴えない郵便局員・シャオチーは、小さな頃から「生きる速度(?)」が周囲よりも少しだけ早くって、1.1倍速位の早送り再生のように日々を送っています。
そのせいもあってか、年頃の彼女には浮いた話もなく、貧乏アパートの一室でほんの少しの空想癖も含めて地味に暮らしてます。
そんな彼女が、ふと手に入れた出会いからお話は動き出します。
勤め帰りに通りかかった公園で知り合った濃い目な好男子とのせっかちな交際の途中で、「1日を無くす(失う)」という奇妙な大事件が起こり、驚きの展開へと進んでいきます。
それにしても、いろんな所に散りばめられていた微かなヒント(伏線)が一気に明らかになり繋がった「その先の物語」が、なんと観る者の心を揺り動かすことか!
別々に思えていた物語が一つに繋がり、時の歯車がかみ合ったように思えてからは、「こうなるんだ…」「そうなんだ…」「ああっ」「うわー」などと、心の中で呟きが止まりませんでした。
映画終盤、スクリーンに映る風景と物語の内容からは「儚さと一体の美しさ」が溢れてきます。
物語中盤まで賑やかだったりごちゃごちゃしたりしていた分だけ、終盤の静けさがガツンと心に響いてきます。
細かく書けないけれど、もう1人の主人公であるしがないバスの運転手「アタイ」が「君を僕の秘密基地に連れて行くよ」と、シャオチーを嘉義県の海辺に連れて行くあの1日こそが「僕だけの、『君との永遠の1日』」なんですよね。
最後、あの再会のシーンは、ズルいくらいに泣かせに来てますよね。ヒロインの「泣き」に耐えられなかったですもの。
私、普段だと、目頭が熱くなる位でいなせるのですが、今回は涙流しちゃいましたから。
他のお客さん達も、すすり泣き多数でした。
あれは、我慢出来ないよなあ。
巧みな構成と脚本。
美しい風景と、対照的な賑やかで雑多な都市の光景。それら2つを上手に取りこんだ画面の作り。
物語のスパイスとしてとても利いている遊び心のある数々のギミック。
見終わって、「まだまだ、こんな映画が創れるんだ」と、思わずにはいられなかった佳作でした。
もう少し見たいとは思うのですが、映画館で観るのは、スケジュール的にちょっと厳しいかな。「こんなことならば、もっと早くに観ておけばよかったなー」と少し後悔しています。
実は6月25日の映画3連発鑑賞の日が本作の封切り日で、気力と上映時間のタイミングが合っていれば、あの日に見ていたはずだったのです。そうすれば、リピート鑑賞してたと思います。
でも、あの日は他にも充実してたから、鑑賞疲れで、ここまで感激しなかったのかもしれません。そう考えれば、今日みることの方が良かったのかな。
本作のBlu-rayが出たら、必ず買います。DVDではなく、Blu-rayで手元に置いておきたい、そんな作品です。
いつもの郊外のシネコンでは上映は終わってしまいますが、これから掛かる所もあるし、追加上映の所もあるようです。
せっかくならば、大きなスクリーンで見ておくことをお勧めしておきます。
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最後に、ネタバレを含む、私的なメモです。
新竹でのやりとりの時のヒロインの母のセリフからすると、ヒロインの父もアタイのように「カメ」なのかもしれませんね。だからこそ、止まった時の中を動けたのかも。
も一つヒロインの父の話。
嘉義から台北へ戻るバスが永安漁港の近くに来た時に、「あそこでいいよ」とバスを停めて降りていくのですが、そこへ迎えに来たのはスクーターに乗った僧形のおじさん。それから考えると、もしかすると、お父さんは亡くなった(もしくは、近い将来亡くなる)のかも。あのバスに乗り合わせたのは、娘との最後のお別れだったのかな。
ヒロインが使っているスマホはiPhoneやGalaxyではなくってご当地台湾のASUSの機種っぽく、勤めている郵便局の机の上のパソコンのディスプレイはacer製っぽかったです。ウチも同メーカーの製品をそこそこ使っているので、なんとなく親近感を覚えました。うんうん。
もう1人の主人公である「カメ」「変人」ことアタイの使っているCanonのフィルムカメラが、とても味わいがありました。
コンパクトレンジファインダーカメラの「キヤノネットG-III(G-3)17」と断定しましたが、デジカメではなく、アナログなフィルムカメラだからこそ、写真屋さんの店頭に飾られていたシァォチーのポートレートの大延ばし写真に意味が出てくる。それが「謎解き」に繋がったと思います。良い写真でした。
私も、子供の頃あのカメラが欲しかったんだよなあ…。
ここまで書いてきて、なんだけど、「カメ」ことバス運転手の「アタイ」の正しい日本語は何なんだろう?
本作のWikipediaでの記事の繁体字版には「劉冠廷飾阿泰,公車司機」と書いてある。日本語の漢字発音でいけば「アタイ」としかならない。伸びて「アータイ」かもしれない。
英語版を見ても「Liu Kuan-ting as A Tai, a bus driver」とあり、「アタイ」っぽい。
この記事では英語版に従って「アタイ」と書いてきたけれど、日本語の予告編や国内版の公式サイトを見てると「グアタイ」になってる。うーん。