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2023年10月5日木曜日

最後があれでは…「アリスとテレスのまぼろし工場」


※この記事は、公開初日である9月15日に初稿を作成しています※

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 「好きではない」とは言うものの、予告編で上田麗奈の鬼気迫る演技を聞いたら、なんとなく見てしまった。
 でも、あの予告編はものすごく凝縮されていて、緊迫感は、実際にはそれほどでもなかったって感じ。

 明るさと彩色の具合をいじくってます。

 この作品は、「声優の力」と「絵の力」とで走り切ったという気がする。
 話自体は、何と言うか、「へー」という感じで、やや消化不良気味。
 最後、エンドロール前のシーンを見てしまうと、「ここまでやって、結局コレか……」と呆然とする。

 上映終了後、席を立って、通路が空くのを少し待っていたら、何人かで見に来ていたらしい若い男性のグループの話し声が聞こえてきた。
 曰く「拗らせ過ぎだよな」「はははははは」。

 そう、まさにそう。
 「話をここまでややこしくして、結局は『エレクトラコンプレックス』」なのだから。
 愛する者たちを救い切った達成感もないし、得るべく望んだ現実が垣間見せる幸福感も無い。
 そう、「拗らせ」だ。


 お金も手間も掛かっている作品なのだけれど、興行的にはどうなのかしら。
 岡田麿里、ネクストはあるのかな。まあ、世間は買ってくれるか。
 ところで、何と言うか、エ○小説書いてくれないものかな。
 この人ならば、相当なものを著してくれそうな気がするのだけれど。これまでの作品から、そんな感じを受けるんだよね。
 「空の青さを知る人よ」だって、一つ間違えば、ドロドロですよ。
 本作でも、綺麗な画像の裏に潜む男女の愛憎というか怨念というか、秘めた淫猥さを嗅いだ気がする。
 「長期間に渡る五実(いつみ=準ヒロイン)の監禁」なんて、もう、まんまですよねえ。美少女文庫とかではなく、フランス書院文庫の気配がする。
 「神の花嫁」というのも、今時、ある種、狂的だし。
 監禁の首謀者である、睦美の義父=「佐上氏(さがみし)」が「異性に関心を持たない」という設定にしておかないと、PG15とかにレーティングされかねないような…。考えすぎか。


 ヒロイン・睦美を演じた上田麗奈さんは、流石の一言ですね。
 狂気と鬼気を帯びたヒロインを演じさせたら、この人は最高水準の1人だと思う。挙動不審なみゃー姉も、ある種の狂気を帯びてるもんね。可憐な役も、もちろん良いけれど。

 準ヒロインの五実を演じた久野美咲さんも、素晴らしい。
 私がちゃんと見ていたアニメとしては「えんどろ〜!」の「マオちゃん」くらいしか無いのだけれど、あれでみた可愛さとはまったく異なる、野生(いや、野放しか)と、それと表裏一体の純粋さ・無垢さを兼ね合わせた表現は凄みを感じた。
 最後、廃墟となった製鉄所の第5高炉を訪れる沙希=五実の声も久野さんなのだけれど、そこまでの五実の時とは違う声になり、今時の女子高生か女子大生っぽく聞こえるのが凄かった。
 あ、そういえばアニメ版「響け!ユーフォニアム」で後輩グループの中の鈴木さつきやってましたね。現実に戻り、第5高炉を訪れる時の声はさっちゃんを低くしたような感じで、「どこかで聞いた」と思ったけど、そうだったのか。


 この2人の全力の演技がなければ、2時間持たなかったと思う。

入場者特典はポストカード。
いつものように、ものすごく補正しているので、現物とはかけ離れています。

 主人公の部屋のコタツの上の週刊マンガ誌の背に「1991」と書かれているから、今から32年前の日本が舞台なのか。
 舞台となる町のあちこちから、最近の「昭和ノスタルジー」みたいな、「昔への憧れ」を感じなくもないけれど、言うほど良い時代でもなかったと、その頃にリアルで大学生やってた私は思う。今よりも、不便な、不自由な時代だと思うし。
 ん? ということは、主役である正宗の父や叔父は私よりもかなり上の世代になるのか。1991年に14歳の正宗と、私は6歳違い。25歳位で正宗が生まれたとして、正宗の父である昭宗(あきむね)は39歳位で、ということは1952年生まれ位か。随分と若く見えるのは、キャラデザの力か。正宗の祖父が74歳と言っているけれど、1917年生まれということ? ちょっと昭宗・時宗兄弟の生まれが遅い気がするけど…。

 作品の中で「土地の神様が、見伏の一番良かった頃に、閉じ込めた」というけれど、今の人からすると、平成の冒頭がそうなのだろうか?
 製鉄の町である「見伏」が本当に良かった頃というのは、高度経済成長期のような気がするのだけれど、そんな頃を是とする人達は、主人公の祖父のように老い過ぎてしまっているから、現在においては物語が成り立たないのだろう。

 個人的には、物語終盤で活躍するスバル(富士重工)の隠れた名車「ドミンゴ」に感激しました。
 ホイールキャップやら何やら、丁寧に描かれていて、実に素晴らしい。カーラジオ見て、「そうね、昔のはあんなだったね」とため息が出ましたわ。
 それにしても、あの車を知ってる人が、観客の中に何人いることか…。
 作り手は、何であの車を選んだんですかね?
 いや、「空の青さを知る人よ」の時も、お姉ちゃんの愛車は渋いジムニーだったから…。分かってる人なんでしょうね。


 ロビーを出て、ゾロゾロと駐車場へ向かうひとかたまり。
 眼の前のカップルは、お兄さんが熱く「現実と、閉じ込められていた空間との間で…」とか語ってた。そんなに熱く語るほどのものだったかはさておき、まあ、微笑ましいか。

 それよりも、車道へ降りる階段でふと右を向いたら、若いお姉さんが「プリキュア」のパネルを写してた。
 「ほほー」と思ってたら、続いて入場者特典の「復活!ミラクルライト」を片手に持って、背景のパネルと合わせて撮影してる。
 拗らせた内容のに比べると、ストレートな作品だもんね。
 いつのプリキュアを見ていたのかは分からないけれど、年格好からすると初代の頃に小学校低学年かなと見受けた。二十年経ったら、ちょうど大人になって、バリバリと暮らす年頃だよね。
 きっと今日公開された「映画プリキュアオールスターズF」から力を貰ったのかな。
 いい光景だった。



 見てスッキリとしなかった作品の後は、家に帰るのが面倒になる。
 帰途の車の中で、「うーん」というマイナスの思考がぐるぐると頭の中を回ってる。

 来月は、予告編でみた「ガルパン最終章 第4話」と、それに「北極百貨店のコンシェルジュさん」に期待することにしよう。

「ムビチケ」、買っちゃった…。2枚も。

 後者は主題歌が凄く良いよね。あれのサビが流れる場面だけでも、涙腺が緩みそうになります。

 Myukさんの「Gift」って曲なのね。
 公開日に合わせて配信か。
 待ち遠しいです。

 「配信」というシステム、嫌いなんだけどねえ。
 現物が手元にないと、安心できなくって。
 だけど、久しぶりに買ってみるかな。


2023年10月4日水曜日

時を超えるものの話は哀しいね 「さよならの朝に約束の花をかざろう」


※この記事は、公開初日である9月8日に初稿を作成しています※
※再上映企画だったので、現在は映画館での上映はありません※

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 来週封切りの「アリスとテレスのまぼろし工場」の前座としての再上映を見てきた。


 「イヨルフ」というエルフパクリの、美男美女ばかりの種族のヒロインの、哀切な物語。

 いい出来だけど、重過ぎて…。再見は遠い未来でいいな。



 エルフといえば長命な種族。

 本作の「イヨルフ」達も同様に、長命な種族。その長命さ故に残酷な運命に巻き込まれてしまう。

 奇跡的に助かった少女マキアと、人間達との物語。


 「自分達は長命な種族。私たち以外の生き物達は、自分よりも先に目の前からいなくなってしまう。だから、自分達の種族以外の存在を愛してはならない」という、イヨルフの長老の言葉。

 生きられる時間の長さが異なる者たちの宿命だよね。物語の初めの頃、マキアが助けられた家で飼われていた犬が死ぬシーンで、それとなく「宿命」を暗示するあたり、上手いなと思った。

 物語のおしまいも、そんな、宿命と、それを越えつつあるマキアの姿を描いて終わる。


 日本だと「八百比丘尼」という有名な伝説があって。

 「禁断の人魚の「身」を食べてしまった若い娘が、そのまま不老不死になってしまう。800年も生きてしまった」

 「年を取らず、若いままの姿を保つから、一つ所に長居が出来ない」というのは、転々と暮らさざるを得ないマキアと養子関係の息子「エミリア」の来し方そのものだ。

 他にも「不老不死」な人型の存在を扱う作品には、特有の哀しさがある。

 それは、はっきりと思い出せないけれどお子様方には話せないような作品にもあったような。時代伝奇ものの小説だったような記憶が薄っすらあるのだけれど。



再上映なのに、入場者配布特典があるのはエラい! 素晴らしい!
パンフがあれば、文句無しなんですけどね…。


 本作の脚本・監督を勤めるのは岡田麿里氏。でも、私は彼女が原作(原作者的役割を果たす場合も含む)を担当する作品は、正直なところあまり好きじゃない。

 「花咲くいろは」も、それが現実寄りの物語なのだろうけれど、なんか見ていて幸せを感じない。

 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」も好きではないし、「荒ぶる季節の乙女たちよ」も好きではない。「空の青さを知る人よ」はギリギリ許容範囲。

 予告編を見たけれど、今度の「アリスとテレスのまぼろし工場」も、どちらかというと好みじゃない。



 それなのに、なぜ本作を見たか?

 それは、石見舞菜香の長編初主演だったから。

 石見さん、声が細いけど、頑張ってましたね。

 「NEW GAME!」シリーズで、主役の涼っちの良き理解者であり、真のライバルでもある「星川ほたる」役。

 その後の「多田くんは恋をしない」での、ヒロインの「テレサ」。アレは反則級に可愛らしかった。石見さんの声にぴったりだった。まとめ動画見るだけでも、込み上げるものがありますね。

 本作のヒロイン・マキアも、よくはまった役でした。内容は、重く、個人的には気に入らないのだけれど、石見さんの声で見切ることができた感じだった。



 内容そのものは好みではなかったから、スッキリとした気分にはなれなかったけれど、ま、この日の〆は「アンサンブルコンテスト」だったので。

 順番逆だったら、モヤっとしたまま週末に突入するところでしたな。