※この記事は、公開初日である9月15日に初稿を作成しています※
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「好きではない」とは言うものの、予告編で上田麗奈の鬼気迫る演技を聞いたら、なんとなく見てしまった。
でも、あの予告編はものすごく凝縮されていて、緊迫感は、実際にはそれほどでもなかったって感じ。
明るさと彩色の具合をいじくってます。
この作品は、「声優の力」と「絵の力」とで走り切ったという気がする。
話自体は、何と言うか、「へー」という感じで、やや消化不良気味。
最後、エンドロール前のシーンを見てしまうと、「ここまでやって、結局コレか……」と呆然とする。
上映終了後、席を立って、通路が空くのを少し待っていたら、何人かで見に来ていたらしい若い男性のグループの話し声が聞こえてきた。
曰く「拗らせ過ぎだよな」「はははははは」。
そう、まさにそう。
「話をここまでややこしくして、結局は『エレクトラコンプレックス』」なのだから。
愛する者たちを救い切った達成感もないし、得るべく望んだ現実が垣間見せる幸福感も無い。
そう、「拗らせ」だ。
お金も手間も掛かっている作品なのだけれど、興行的にはどうなのかしら。
岡田麿里、ネクストはあるのかな。まあ、世間は買ってくれるか。
ところで、何と言うか、エ○小説書いてくれないものかな。
この人ならば、相当なものを著してくれそうな気がするのだけれど。これまでの作品から、そんな感じを受けるんだよね。
「空の青さを知る人よ」だって、一つ間違えば、ドロドロですよ。
本作でも、綺麗な画像の裏に潜む男女の愛憎というか怨念というか、秘めた淫猥さを嗅いだ気がする。
「長期間に渡る五実(いつみ=準ヒロイン)の監禁」なんて、もう、まんまですよねえ。美少女文庫とかではなく、フランス書院文庫の気配がする。
「神の花嫁」というのも、今時、ある種、狂的だし。
監禁の首謀者である、睦美の義父=「佐上氏(さがみし)」が「異性に関心を持たない」という設定にしておかないと、PG15とかにレーティングされかねないような…。考えすぎか。
ヒロイン・睦美を演じた上田麗奈さんは、流石の一言ですね。
狂気と鬼気を帯びたヒロインを演じさせたら、この人は最高水準の1人だと思う。挙動不審なみゃー姉も、ある種の狂気を帯びてるもんね。可憐な役も、もちろん良いけれど。
準ヒロインの五実を演じた久野美咲さんも、素晴らしい。
私がちゃんと見ていたアニメとしては「えんどろ〜!」の「マオちゃん」くらいしか無いのだけれど、あれでみた可愛さとはまったく異なる、野生(いや、野放しか)と、それと表裏一体の純粋さ・無垢さを兼ね合わせた表現は凄みを感じた。
最後、廃墟となった製鉄所の第5高炉を訪れる沙希=五実の声も久野さんなのだけれど、そこまでの五実の時とは違う声になり、今時の女子高生か女子大生っぽく聞こえるのが凄かった。
あ、そういえばアニメ版「響け!ユーフォニアム」で後輩グループの中の鈴木さつきやってましたね。現実に戻り、第5高炉を訪れる時の声はさっちゃんを低くしたような感じで、「どこかで聞いた」と思ったけど、そうだったのか。
この2人の全力の演技がなければ、2時間持たなかったと思う。
いつものように、ものすごく補正しているので、現物とはかけ離れています。
主人公の部屋のコタツの上の週刊マンガ誌の背に「1991」と書かれているから、今から32年前の日本が舞台なのか。
舞台となる町のあちこちから、最近の「昭和ノスタルジー」みたいな、「昔への憧れ」を感じなくもないけれど、言うほど良い時代でもなかったと、その頃にリアルで大学生やってた私は思う。今よりも、不便な、不自由な時代だと思うし。
ん? ということは、主役である正宗の父や叔父は私よりもかなり上の世代になるのか。1991年に14歳の正宗と、私は6歳違い。25歳位で正宗が生まれたとして、正宗の父である昭宗(あきむね)は39歳位で、ということは1952年生まれ位か。随分と若く見えるのは、キャラデザの力か。正宗の祖父が74歳と言っているけれど、1917年生まれということ? ちょっと昭宗・時宗兄弟の生まれが遅い気がするけど…。
作品の中で「土地の神様が、見伏の一番良かった頃に、閉じ込めた」というけれど、今の人からすると、平成の冒頭がそうなのだろうか?
製鉄の町である「見伏」が本当に良かった頃というのは、高度経済成長期のような気がするのだけれど、そんな頃を是とする人達は、主人公の祖父のように老い過ぎてしまっているから、現在においては物語が成り立たないのだろう。
個人的には、物語終盤で活躍するスバル(富士重工)の隠れた名車「ドミンゴ」に感激しました。
ホイールキャップやら何やら、丁寧に描かれていて、実に素晴らしい。カーラジオ見て、「そうね、昔のはあんなだったね」とため息が出ましたわ。
それにしても、あの車を知ってる人が、観客の中に何人いることか…。
作り手は、何であの車を選んだんですかね?
いや、「空の青さを知る人よ」の時も、お姉ちゃんの愛車は渋いジムニーだったから…。分かってる人なんでしょうね。
ロビーを出て、ゾロゾロと駐車場へ向かうひとかたまり。
眼の前のカップルは、お兄さんが熱く「現実と、閉じ込められていた空間との間で…」とか語ってた。そんなに熱く語るほどのものだったかはさておき、まあ、微笑ましいか。
それよりも、車道へ降りる階段でふと右を向いたら、若いお姉さんが「プリキュア」のパネルを写してた。
「ほほー」と思ってたら、続いて入場者特典の「復活!ミラクルライト」を片手に持って、背景のパネルと合わせて撮影してる。
拗らせた内容のに比べると、ストレートな作品だもんね。
いつのプリキュアを見ていたのかは分からないけれど、年格好からすると初代の頃に小学校低学年かなと見受けた。二十年経ったら、ちょうど大人になって、バリバリと暮らす年頃だよね。
きっと今日公開された「映画プリキュアオールスターズF」から力を貰ったのかな。
いい光景だった。
見てスッキリとしなかった作品の後は、家に帰るのが面倒になる。
帰途の車の中で、「うーん」というマイナスの思考がぐるぐると頭の中を回ってる。
来月は、予告編でみた「ガルパン最終章 第4話」と、それに「北極百貨店のコンシェルジュさん」に期待することにしよう。
後者は主題歌が凄く良いよね。あれのサビが流れる場面だけでも、涙腺が緩みそうになります。
Myukさんの「Gift」って曲なのね。
公開日に合わせて配信か。
待ち遠しいです。
「配信」というシステム、嫌いなんだけどねえ。
現物が手元にないと、安心できなくって。
だけど、久しぶりに買ってみるかな。