台風一過の本日(9月2日)、予定通り2回目を鑑賞。
上映開始時刻の配置が今一つなので、朝一の回で見たのだけれど、観客数は10名位。まあ、月曜日の朝から映画見に来るような客は限られますからね…。
今週金曜日から観客数が見込めそうな作品が掛かるので、シネコンで2番目に大きいシアターを使えるのも、この木曜日(9月5日)までかな。
それもあるので、今日、観に来たのですけれど。
この絵を反転したのがコミカライズの表紙。同じにはしたくなかったということ?
いつも書いているように、「映画は2回目が1番鑑賞しやすい」です。本作もそうでした。
1回目では拾えなかったこととかを含めて、腑に落ちました。
今回はストーリーに関わる記載があるので、映画未見の方はご覧にならないことをおすすめしておきます。
ま、たいした話ではないとは思いますが。
所詮は、私個人の妄言と戯言ですし。
あと、記事長いです…。
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主人公3人の中でもメインである「日暮トツ子」は、「共感覚」と呼ばれる感覚能力を持っているのでしょう。「音」に色を感じる延長線で、「人」に対しても色を感じると。
冒頭、寮の食堂での朝食のシーンで、自分以外の人達に「色」を感じることを示すところがあるのですが、その際には1人の人に対して複数の色が着いている様に捉えています。
「人の色」について、トツ子が「綺麗」と感じるのは複数の色が混じった「混色」ではなく、特定の色だけの「純色」に近いもののようです。
多くの色を含んでいる人にはちょっと近寄りがたさを感じているのかな。
そういえば、寮で同室の3人−森の三姉妹−は、トツ子に対してフラットに接してくれているからか仲が良くてトツ子からの評価も高いのですが、湛えている色の数が少なめな気がします。
「色数」の多寡以外にも、どうやら「人柄」と「色の寒・暖」は対応しているようで、主人公3人の内の1人で、最初に綺麗と感じて惹かれた同級生「作永きみ」は「青」と捉えてます。ピュアで潔癖・クールなところを「青」と感じたのかな。
もう1人の「影平ルイ」に対しては「緑」。これは、控えめで、周囲に対して気配り出来つつ、芯の強さも併せ持つ人柄を「緑」と感じたのでしょうか。
物語の最終盤まで自分自身の色は「分からないの」と語っていたトツ子。
最後に、ついに「赤」と捉えます。
ここまで物語を見てきて、「トツ子の取った行動で、人を結び付け、悩んでいた状態に対して心温めて、知らず知らずの内に次に向けて心の持ちようを変えていった」ことから「温もり」「励まし」「熱」に繋がる「赤」なのかなと思いました。
ボンヤリしているように見えて、実は1番的確に「人」を捉え、自分にも他人にも真摯に接するのがトツ子なんだと思います。あと、純粋に綺麗なものが好きなんだろうな。本当に良い子。
でも、「他人とは何かが違う」「他の人には出来ることが、自分は上手く出来ない」ということ、そして自分の色が分からないことも含めて、何処かに悩みを抱えています。その悩みは、自分自身でしか解決出来ないのが、ちょっと辛いかな。
主人公3人の内の2人目は「作永きみ」。
外部・他人からの評価は高く、いわゆる「よい子」なのですが、自分自身としては「そうじゃない」という想いを強く持っている子。
兄と2人で実の親ではなく祖母に育てられているということから、何か家庭事情的に背負っているものがあり、それもあって、「よい子」を演じてきたことに、悩んでいるのでしょうか。
そんな思いもあって、逃げ出すように学校を辞めてしまうのですが、同じ女子校に通っていた祖母の悲しみを思うとなかなか「学校を辞めてしまったこと」を祖母に告げられず、苦しんでもいます。
「動きたくても動けない」「何をしたらいいのだろう」「どうしたらいいのだろう」―闇とまではいかないにしても、薄暗闇の中で、ちょっと途方に暮れている―そんな風に感じます。
エレキギターはなんとなく、心の隙間を埋め、悩みを絞り出すように始めたのでしょうか。
そして彼女がバイトしていた古書店「しろねこ堂」で主人公3人が出会った時から、物語が大きく動き出します。
主人公3人の最後の1人は「影平ルイ」。
唯一の男の子。作中、チラッと映る家族の写真からすると、母子家庭で、兄がいるようですが、その兄は家業の医院を継がず不在のようです。
結果的に親の期待、また地域社会からの期待を背負わされてしまっている状況で、だけど、それをよく理解して、期待に応えるように努力をしている子です。学業の成績も良いようで、秀才タイプですね。
そんな頑張っているルイ君の精神的な支えは「音楽」で、演奏も作・編曲もこなすという凄い子です。
ただ作中で「友達が出来たんだ」というセリフがあること、また、他人との距離の取り方や接し方に、やや違和感があることからすると、人間関係的にはナイーブなところがあるようです。
そこの所が、個人的には少し嫌に感じてしまい、ちょっとだけ「ルイくん、ちょっと気持ち悪いような…」と思ってしまいましたが。
「自分の本当にやりたいこと」「周囲から望まれ期待されていること」との板挟み。流されるままではなく、自分の意志を示さないと状況は変わらないけれど、誰も傷付けず、上手くやるにはどうしたらいいんだろう。
3人が、それぞれ抱えている、自分自身でどうにかしなければならない、でも、ちょっと踏み出せずにいる「悩み」「重荷」「負担感」から解放してくれたのが「音楽」ということになるのでしょう。
3人だけではなく、いろんな人が持っている「抱えている想い」が音楽の力によって、緩和されるということを、3人のライブの時の体育館のシーンで描いているのかな。
抑圧する側のシスター達や校長までもが、「水金地火木土天アーメン」のフレーズに乗って楽しげに踊っているところは、そんな感じがします。
日吉子先生までもが、普段は秘めている熱い感情を外に出しますからね。
そうして、主人公3人は、まだ漠然としてはいる感じもしますが、何かを決めて、何かを掴んで、これからの「明る目な方向」へと進み始めることが出来たように思います。
妄想するのならば、きみちゃんと類くんは将来結ばれて島の医院を継ぐ。作中、2人の色が混ざり合うイメージが出てくるし、本編ラストの「また、すぐ会えるでしょ」というきみちゃんのセリフからもそんな気がします。
トツ子ちゃんは、日吉子先生のように学園のシスターかな。日吉子先生の「色」に近いトツ子ちゃんの「色」から考えると、「人の心を温める」そんなお仕事になるのかなと。
今時の子達を描いたにしては綺麗すぎる気もしますが、まあ、こういう作品も有っても良いのかなと思います。
響く人にはすぐに響くし、じっくりと観ている内に「ああ」と思う人も多いと思います。そういう意味で、「じわじわ来る」映画ですかね。
刺激の少ない「淡い映画」なので、合わない人には合わないでしょうけれど。
私も、初見時は正直想像していた内容とは異なったので「? なんかイマイチ?」と思ったのですが、再見して改めて考えてみると、腑に落ちる良い作品だと思いました。
ただ、やはり気になるのは興行かな。「ガツンと来る」映画は、その分かりやすさから成績は良いんですよね。
山田監督の映画をこの先もっともっと観たいので、本作の興行成績が振るうことを切に願うところですね。
まあ、名古屋は市場規模も小さいし、関東ならば客の入りも大丈夫なのでしょうけれど。きっと。
東宝系だとかなりの数の映画館で掛かってるし。
いつものシネコンは松竹系だから。
【投稿前に追記】
週が変わった今日(9月6日)から、想像どおりシアターが変更になりました。332席→124席。折り込み済みなのでしょうが、ちょっとさみしいところです。
「作品を観た者の思ったこと」と、「監督の考えていたこと」との、ある種の突き合わせが出来ます。
作品への理解・解釈は各々の心の中の問題なので、何が正解という訳ではありませんが。
参考に読んでみるのもよいと思います。
インタビューって、インタビュアーの知識や能力に依拠していて、引き出されるものの質がそこで決まってしまいます。そこには、要注意ですが。
このインタビューは、なかなか良いところを突いてると思います。
「言葉」の話、「文字の重みの変化」「ライフスタイルの変化」とか、なるほどと思える内容でした。
公式サイトに抜粋が出てる「企画書」の内容も参考になります。
そういえば、同じ東宝配給の「すずめの戸締まり」の来場者特典の「新海本」には、もう少し多めに抜粋されていた企画書が収録されていましたね。本当は内緒の資料なのでしょうが、作品の根幹に関わるので読むと興味深いです。どこかの出版社が、「ヒット作の企画書を読み解く」とかって出してくれないかしら。
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重箱の隅をつつきます。
大切な役どころの日吉子先生を、新垣結衣が演じています。概ね、上手いとは思うのですが、もうちょっとだけ、感情を声に込められるともっと良いのにと。もったいない。
生徒と接触するシスターという役割上、抑制するのは大切なのですが、ちょっとフラットすぎる気がしないでもないです。
まあ、だからこそ、「聖バレンタイン祭」のライブの途中で、体育館からそっと抜け出して踊る姿が映えるのかもしれませんが。
そういえば、色だけじゃなく、踊りという点でも、トツ子と日吉子は似ているかな。
そもそも、日吉子が使っていた寮のベッドを後輩のトツ子が使っているというところも、宿命を感じます。
所々で挿入される「鳥のカット」。
山田監督らしさを感じました。
羽数であったり、仕草であったりが、その場面に対応したものになっていて、興味深いです。Blu-ray出たら、もう少し細かく見てみたいと思ってます。
トツ子ときみちゃんが、初めてルイ君の住む島に向かうシーンの冒頭。
まるで緑色の鳥が画面右から左に横切るようにすーっと線が描かれ、それが島の稜線の形になるところ。
「ほーっ「」と思いました。
ここも、山田監督らしさでしょうか。
メリハリのある、パキッとしたキャラ絵が好みといえば好みなので(だから「ぼっち・ざ・ろっく!」は絵的にも好き)、ちょっと本作のキャラクター達は馴染めなかった。特に日吉子先生の目の周りは、最後までゾワッとしました。
ちょっとふんわり・ぼんやりしたキャラ絵の方が、「アニメ・アニメ」せず、本作のテーマには合うのでしょうけれど…。
「平家物語」は、まあ、しゃあない。ああいうお話だから。それに、「犬王」との関連もあるのだろうし。
雪のために島から帰れなくなった2人が旧教会で「合宿」しているところで、付き添うルイ君が「ラジカセ」を弄くって気象情報を聞こうとするのですが、「ラジカセのロッドアンテナをあれこれ捻くっている内に、どこかのラジオ局にチューニングが合う(←バレエ「ジゼル」が聞こえてくるとこ)」というのは、ダメだと思います。そんな馬鹿な。チューニングダイヤルを回そうよ。
あれは、今は亡き三洋電機(SANYO)のテレコ(※)である「U4」シリーズをモチーフにしたと思われるのですが、カセットテープを入れる部分に「MP3」らしき記載が見えるし、AMラジオの周波数表記が「5.3」等となっているようなので、もしかしたらオマージュ商品(例えば「SANSUI Bluetooth搭載ラジカセ【USB/SDカードMP3再生対応】 SCR-B2」)を使っているのかもしれません。SANSUIのロゴマークの潰れ方が、イメージに近いし。
古さを出すにしても、現役高校3年生のルイ君が1980年代の当時物を使っているのは、ちと考えづらいですからね。
「それにしても、ちゃんとチューニングダイヤルを回そうよ」と、80年代に家電少年だったオッサンは思うのです。
記事をまとめてて、さっき公式サイトのキャラクター紹介を見ていたら、トツ子ちゃんのとこに「全寮制の学校に通う」とあったのですが、あれ? きみちゃんは自宅から通ってますよね? それに、路面電車の中でもチラホラと同校の制服を着た子を見ますね。ま、後者は寮⇔学校の行き帰りかもしれませんが。
公式サイトを見ていて、「うーん…」と思ったのは「かぎ括弧の使い分け」。
どうやら映画以外の何らかの作品を表す時に「かぎ括弧(=「」)」を使い、映画作品を表す時に「二重かぎ括弧(=『』)」を使っているようなのですが、サイト内の文章においていろんなところで「かぎ括弧」は使われていて、何が何やら分かりづらい気がします。
単純に「何らかの作品を示す時は『』で括る。それ以外は「」を使う」としちゃえばいいのに。
あ、これは映画そのものについてではありませんでした。
あと、再見しないと確言できませんが、ルイ君ちの医院、の名前、どうだったんだろう? ちゃんと「影平医院」なってたのかな?
※:
「カセットテープレコーダー」を略して「テレコ」と呼びましたねえ。若い人には分からないかも。「ラジカセ」はなんとなく通じるのかな。
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とりあえず、本作は映画館での鑑賞は2回かなと。
後は、Blu-rayを待つことにします。
ノベライズ・コミカライズを読んで思うところがあれば、あるいは…。
IMAX上映に興味が無い訳ではないけれど、例えば「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のDolby Cinema上映の時のように、何か対応措置が取られているのなら間違いなく行くのですが。
コミカライズは鈴木小波さんが担当しておられるのですね。Kindleで買う時に初めて知りました。
鈴木小波さんといえば、「ホクサイと飯」。
個人的には一番最初のヤツがお気に入りです。つい、家を出る前に読み返してしまいました。新シリーズ(話としては前日譚だけど)は、どうにも馴染めず、途中で脱落してしまったんですよね…。
コミカライズの表紙を見る限り、絵は映画に寄せてるんですかねえ。目は鈴木さんの目っぽいですが。
コミカライズは、担当する漫画家さんと編集者の段階で、既に話の取捨選択とイメージ化がなされている為、ある意味フィルターが掛かっていると思うので、読む順番としては、その程度の低いノベライズからだろうとは思うのですが。
「映画を鑑賞して、何を思ったか」だから、自分の考えがまとまるまでは読めん。
記事まとめたから、封印していたヤツ、やっと読める。ささやかな自己満。
Amazonのノベライズの評価に、熱いのがありました。面白かった。ノベライズ読むのが、なんとなく楽しみになりました。
パソコンで何かしてる時、BGM代わりにYouTube流してると、このところ、過去に見た動画が妙にお勧めされるのです。
そんな中に、名作「色づく世界の明日から」のオープニング動画がありました。
そういえば、「きみの色」も「色づく世界の明日から」も舞台は長崎。
長崎に、奇しくも「色」がつく作品が集まりましたねえ。